こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『新参者』です。
当作品では、日本橋の小伝馬町(こでんまちょう)で一人暮らしの女性が絞殺された事件の真相を、加賀恭一郎が新参者として暴いていくという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、かなり好きな作品ですね。
当作品のテーマは「人情・愛情」と言えるでしょうか。
加賀は単に証拠から真相を暴くのではなく、人の内面に寄り添う過程を通じて真相を暴いていくのですが、その様子が僕の心をとてもほっこりさせてくれました。
多様な登場人物たちも、愛情や人情を不器用ながらも表現しているシーンがあって、めちゃくちゃ心が暖かくなります。
また、当作品は以下のように9章立てとなっております。
- 第一章 煎餅屋の娘
- 第二章 料亭の小僧
- 第三章 瀬戸物屋の嫁
- 第四章 時計屋の犬
- 第五章 洋菓子屋の店員
- 第六章 翻訳家の友
- 第七章 清掃屋の社長
- 第八章 民芸品屋の客
- 第九章 日本橋の刑事
ただ、それぞれの話が完全に独立しているということではありません。
どの章も話の舞台は日本橋でして、女性が絞殺された事件が背景にはあります。
つまり、順々に読んでいくことで、事件の真相が少しずつ明らかになってくる構成ということです。
また、読んでいて思ったことがあるのですが、ドラマにピッタリの構成だなと感じましたね。
1つの章を1話として連続ドラマを作れば、完全に形になるような流れになっていましたので。
まあ実際に、この『新参者』はドラマ化されています。
まだドラマは観ていないのですが、そのうち観てみたいですね。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『新参者』の詳細
作品名 | 新参者 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2009年9月18日 |
ページ数 | 400(文庫) |
あらすじ
小伝馬町で、一人暮らしの女性が絞殺された。
煎餅屋・料亭・洋菓子屋といった、町に根付いた店からの情報により、女性の人物像が徐々に輪郭をあらわす。
しかし、輪郭がハッキリするにつれて、女性は恨みを買うような人物には見えなくなってくる。
なぜ女性は殺されたのか。
犯人はこの町にいるのか。
日本橋に異動となった新参者・加賀恭一郎が、傷ついた人の心を救いながら真相に迫る。
主な登場人物
『新参者』は章立てになっていることから、登場人物がかなり多くなっています。
また、登場人物は実際に読み進めていく過程でちょっとずつ知る方が楽しめる構成になっています。
したがって今回は、加賀恭一郎と被害者の人物像だけご紹介しますね。
加賀 恭一郎(かが きょういちろう)
主人公。
あることをキッカケに、練馬署から日本橋署へ異動となりましたが、そのキッカケは今回ほとんど明らかにされません。
ちょっとした証拠から真相を見破る驚異的な洞察力を持っており、度々周囲の人を驚かせます。
過去作でも人の心に寄り添う人物像が垣間見えていましたが、『新参者』ではよりその人物像を色濃くさせた印象です。
三井 峯子(みつい みねこ)
一人暮らしの45歳の女性。
今回の被害者。
小伝馬町にあるマンションの自室で、何者かに絞殺されてしまいます。
死亡時は一人暮らしでしたが、離婚歴のある女性でして、元々は夫と息子の3人暮らしでした。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
不器用な愛情がとても共感できる!
『新参者』の見どころは、「愛情・人情」と言っても過言ではありません。
加賀はもちろんのこと、多様な登場人物たちも異なる形の愛情・人情を表現していまして、そのどれもがホントにほっこりくるんですよ。
ただ、どのシーンも詳細に解説するとネタバレになってしまうので、ちょっと詳細については控えておきます。
ザックリとした表現になりますが、普段は無愛想なのに、心の奥底にはしっかりとした愛情があって、その愛情を本人にバレないようさりげなく形にしているというイメージです。
こういうシーンを見るとですね、愛情って美しいなと思います。
僕は、分かりやすく愛情を伝えようとする場面が、あまり好きではないというか、なんだか恥ずかしい気持ちになるんですよね。
本来は、尊敬していることや好きであることを、真っ直ぐに伝えられる方が、コミュニケーションはスムーズにいくとは思います。
だけど、人間ってそんな単純じゃないですよね。
僕には一緒にいて凄くに楽しい親友がいますけど、「お前といると楽しいわ!」なんて恥ずかしくて言えません。
だけど、自分を楽しい気持ちにさせてくれることへの感謝は示したいので、誕生日を利用してプレゼントを渡すといったようにですね、さり気なく感謝を形にしています。
こういうやり方の方が、僕は好きです。
『新参者』の登場人物たちは僕と一緒で不器用な性格であることが多いがゆえに、いずれの愛情表現にも凄く共感できました。
おそらく、彼等のやり方に共感できる方は結構いるんじゃないかと、僕は思っています。
こういうことって、本当にあるんでしょうね・・・
読んでいてほっこりする『新参者』ですが、逆にゲンナリするシーンもありました。
結構悲惨な話に僕は感じたんですけど、こういうことって本当にあるんだろうなと思いました。
実際に、僕がゲンナリしたシーンを抜粋してご紹介しますね。
そこで克哉に結婚をさせる作戦に出た。難しいことではない。妊娠すればいいのだ。
克哉は避妊に関しては完全に玲子任せで、「今日は安全日」といえば全く疑われなかった。計画通りに玲子は身籠った。
当初克哉は困惑していたが、双方の両親が喜んでくれたこともあり、ついには彼も結婚を決意してくれた。
出典:新参者p319
いやー、悲しいですよね・・・。
まあ、当然この話はフィクションなんですけど、実際にこういう事をした人はいるはずですよね。
ただ、ぐずぐずしている男を決意させるために、こういう事をする必要があるのかもと、冷静に考えている自分もいます。
このように、いろんな事を想像するキッカケを作ってくれるのも、小説の魅力の1つです。
終わったと思わせて、終わってないのがいい
これは東野圭吾さんの真骨頂とも言える書き方なんですけど、「終わったと思わせて終わってない」という構図が『新参者』では展開されています。
どういうことかと言いますと、最後の方である程度事件の全貌が見えてですね、読み手としては「これで一件落着か」となるわけです。
ただ、さらにそこからもうひと展開させてくれるのが、東野圭吾さんの凄さです。
そして、その結末を見た時の僕の感情を言うと、「なるほど!これで完全に繋がった!」という感じでした。
また、その結末には加賀の特性である「人の想いを見抜く力」も込められていました。
つまり、最高のラストだったということです。
まとめ
今回は、『新参者』のあらすじ・感想について書いてみました。
過去作でも加賀の人情味あふれるシーンはたくさんあったんですけど、『新参者』に関しては、多様な登場人物たちも人情味にあふれているのが良かったです。
また、最後の加賀のセリフがバッチリ決まってて最高なので、ぜひ読んでほしいと思います。
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。