あらすじ・感想

【あらすじ・感想】東野圭吾の『変身』は、没入感を味わえる傑作でした【ほぼネタバレ無し】

こんにちは、TKです。

今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『変身』です。

当作品では、脳の一部を移植された男が、徐々に別の何者かに変身してしまうという物語が描かれております。

主人公の純一は頭を撃ち抜かれてしまい、脳の一部が欠損するのですが、その部分を他人の脳で埋め合わせたんですね。

それがキッカケで、徐々に性格が変わってしまい、生活が破綻していく様子が描かれています。

簡単な感想から言うと、とても没入できる作品でした。

徐々に自分ではなくなってしまう感覚が純一視点で描かれているので、自然と感情移入できます。

自分が自分でなくなっていく苦悩を描いている様子は、見ていて思わず切なくなりました。

また、「脳の一部を他人のもので埋め合わせたら性格が変わる」という設定なんですけど、ちょっと現実味も感じる設定ですよね。

倫理観を問うという意味で社会派の内容にもなっていますので、とても読み応えがありました。

今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。

『変身』の詳細

作品名変身
著者東野圭吾
発売日1991年1月12日
ページ数382(文庫)

あらすじ

穏やかで平凡な青年「成瀬純一」は、不運にも強盗犯に頭を撃ち抜かれてしまう。

奇跡的に生還を果たしたものの、拭いきれない違和感に戸惑う日々を送る。

やがて明確に性格が変化していき、それは生活を破壊していった。

人が生きているとは、一体どういう意味なのか。

深い問いを融合させたサスペンス。

主な登場人物

成瀬 純一(なるせ じゅんいち)

主人公。

産業機器メーカーにて、ユーザーからの問い合わせに対応する仕事をしています。

平凡で目立たない男で、少し気弱なところがあります。

不動産屋で銃を持った京極に、不運にも頭を撃ち抜かれます。

ただ、京極に狙い撃ちされたのではなく、女の子を守ろうとして結果的に撃たれる形となりました。

奇跡的に助かりますが、性格に変化が出るなど、なぜか事件前と人が変わったようになりました。

京極 瞬介(きょうごく しゅんすけ)

強盗犯。

不動産屋で女の子を銃で撃とうとしたら、それを純一が庇い、結果的に純一の頭を撃ち抜きました。

逃走中に自分の心臓を撃ち抜き、自殺しました。

堂元(どうげん)

純一の手術を担当した医師。

なぜか、手術の詳細をあまり語りがらない節があります。

若生(わこう)

堂元の助手。

橘 直子(たちばな なおこ)

堂元の助手。

入院中に純一の生活を世話してくれました。

葉村 恵(はむら めぐみ)

純一の恋人。

そばかすがあり、美人とは言えない少女。

ただ、性格はとても明るく、献身的です。

倉田 謙三(くらた けんぞう)

捜査一課。

純一が撃たれた事件の調書を作成するために、純一の元を度々訪れます。

嵯峨 道彦(さが みちひこ)

純一が救った女の子の父親。

弁護士。

娘の命の恩人ということで、いろんな形で純一の力になろうと奮闘します。

感想

では、淡々と感想を述べていきます。

純一視点で書き切ってるのが良い!

『変身』では、9割方の文章が純一視点で書かれています。

したがって、常に純一の気持ちになりきって読み切ることができるのですが、それが大きな没入感を生み出してくれるんですよね。

純一は事件前はめっちゃ優しい青年なんですけど、事件後に性格が変わっていきます。その変化に苦しむ様子が、ひしひしと伝わってくるんですよ。

また、最初は自分のことを「僕」と言っているのに、いつの間にか「俺」になっているところが個人的には好きです。

思っていることが、酷すぎて笑える

性格が徐々に変化していく純一ですが、あまりの変貌ぶりに笑えてくるくらいです。

酷すぎて逆に笑えてきた描写がありますので、抜粋してご紹介します。

幼稚な理論。退屈で浅薄。聞いているのが苦痛になる。

しかしその苦痛を無視するよう努めた。

出典:変身p145

これは、恋人の話を聞いている時の純一の感情です。

以前はどんな話も楽しく聞いていたのに、事件以降、あらゆる話がつまらないと思うようになってしまいます。

特に「浅薄」って言葉が、いいですよね(笑)。心の底から見下している感じが滲み出ています。

ただ、そういう感情を抱いている自分に純一は苦しんでいるんですよね。

ですが、そういった事情を踏まえても笑えるくらいに言動や感情が酷いので、そのあたりは見てて結構面白かったです。

この感覚、めっちゃわかる

物語の本筋とはズレるのですが、恋愛感情に関して共感できる描写がありましたので、抜粋してご紹介します。

少し親しくしてもらっただけで、のぼせて、相手までが自分に愛情を抱いていると錯覚してしまうのだ。

それが単なる好意、あるいは社交辞令だと気づくたびに自己嫌悪に陥り、傷ついてきたのだ。

出典:変身p37

こういった経験、誰もがしたことあると思います。

だから大人になると、少し優しくされても、冷静に対処するようになっていきます。

ただ、もしかしたら、愛情を抱いてくれていた人もいたのかもしれません・・・。

このシーンを読んでいる時、そんなノスタルジックな感情に浸っていました(笑)。

まとめ

今回は、『変身』のあらすじ・感想について書いてみました。

非常に没入感を味わえる作品で、かつ社会派の問いも提示されていましたので、かなり良かったですね。

自信を持ってオススメできる作品です。

では、以上となります。

最後まで見て頂き、ありがとうございました。

RELATED POST