こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『赤い指』です。
当作品では、中学生の息子が女の子を殺めてしまった事件を、家族ぐるみで隠蔽するが、それを加賀が鋭い洞察力によって暴いていくという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、めっちゃ良かったです!
今、加賀恭一郎シリーズを順番に読んでいる最中なのですが、今のところ一番読み応えがありましたね。
今回のテーマは、「家族」です。
ゆえに、とても愛情あふれるシーンもあれば、家族ならではの苦しみもあって、良くも悪くも感情を大きく揺さぶってくれました。
良いシーンも悪いシーンも描写力がエグくてですね、読みながら「いやあ、素晴らしい・・・」と、ぶつぶつ独り言を呟いてしまったほどです(笑)。
かなりオススメの作品ですので、今回の記事でイメージを掴んだ後にですね、ぜひ読んでほしいと思います。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『赤い指』の詳細
作品名 | 赤い指 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2006年7月25日 |
ページ数 | 306(文庫) |
あらすじ
家に帰ると、そこには少女の死体があった。
妻の話によると、息子が絞殺したらしい。
警察に息子を突き出そうとするが、妻は異常な程に息子を庇う。
仕方なく男は死体を公園に捨てるが、警察はそれを即座に見抜いてしまう。
もう言い逃れはできないと思った時、男の心に悪魔が宿る。
家族の愛と苦しみを描いたミステリー。
主な登場人物
加賀恭一郎
主人公。
練馬署の刑事。
真実を突き止めることへの執念が凄まじく、どんな些細なことも決して軽視しない胆力があります。
過去の作品で度々、父に対してよそよそしい態度を取ることが多かったですが、その理由が今回明らかになります。
松宮脩平(まつみやしゅうへい)
今回の作品の、語り手的な存在です。
刑事として働いており、成り行きで加賀とタッグを組むことになります。
実は加賀とは微妙な繋がりがあって、タッグを組むことには少々後ろ向きでした。
松宮の母(克子)には兄がいて、その兄の名前は加賀隆正と言います。隆正は、加賀恭一郎の父です。
松宮は隆正に良くしてもらったことから、隆正をとても慕っていました。
ただ、恭一郎は父に対して薄情な態度を取ることが多く、あまり好きではなかったんですね。
そんな加賀恭一郎とタッグを組まされたので、ちょっと嫌な気持ちになったということです。
松宮克子(まつみやかつこ)
隆正の妹。
隆正からの援助があったから、脩平を立派に育ててこれました。
ゆえに、隆正をとても慕っています。
加賀隆正(かがたかまさ)
加賀恭一郎の父。
癌で入院していますが、見舞いに来てくれるのは妹の克子と甥っ子の修平だけです。
懺悔の気持ちで脩平達に良くしていることが分かる描写があり、そこから加賀恭一郎との関係性も少しずつ見えてきます。
前原昭夫(まえはらあきお)
47歳。
茅場町の照明器具メーカーに勤務。
ボケた母親と同居しているが、妻(八重子)はその現状に不満を抱いており、家族仲は冷え切っていると言っていいでしょう。
また、息子(直己)もかなりの問題児でして、それが一層家族間の問題をこじらせている印象です。
前原八重子(まえはらやえこ)
42歳。
明夫の妻。
成り行きで結婚した感じなので、夫に対する愛情は薄い印象です。
昭夫の母(政恵)に子育てのことでいろいろ言われた過去があり、同居にはかなり後ろ向きでした。
息子に強く言えない性格でして、その様子を見ていると結構イライラします(笑)。
田島春美(たじまはるみ)
明夫の妹。
駅前の洋品店を経営。
母の正恵とは仲が良く、定期的に明夫の家に行って世話をしています。
明夫も八重子も介護に後ろ向きであり、その状況に辟易している様子が印象的です。
前原政恵(まえはらまさえ)
明夫の母。
明夫が購入した家に一緒に住んでいます。
足腰が弱く痴呆症も患っていることから、介護を受けながら生活しています。
前原直巳(まえはらなおみ)
昭夫の息子。
幼女趣味があり、女の子に酒を飲ませて悪戯しようとした過去があります。
家に遊びに来た少女を、絞殺してしまいます。(犯人であることは序盤で分かるので、これはネタバレではありません)。
自分に非がありそうな話はとことん避ける性格なので、見ていてムカつきます(笑)。
前原章一郎(まえはらしょういちろう)
明夫の父。
老人性痴呆症と診断された時期から、亡くなるまで家族の介護を受けながら生活していましうた。
子どものように暴れることが増えて、政恵を含めた家族が手を焼いていました。
最期は死を望まれているくらいの有様だったので、可哀想な気持ちになりましたね。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
メンタルが元気な時に読んで!
最初に言っておきたいのは「メンタルが元気な時に読んで!」ということです。
なぜかと言うと、メンタルを病む描写が多いからです。
例えば、以下のような描写が当作品では描かれています。
- 息子がボケた父親の死を願う
- 中学生が少女を考察する
- 家族間で責任のなすりつけ合いをする
はい、字面を見るだけで嫌な気持ちになりますよね(笑)。
今までの作品でも殺人を扱ってはいましたけど、今回は加害者も被害者も子どもなので、結構メンタルを抉られます・・・。
ただ、個人的に結構キツイのが、現実と向き合うことを避ける態度です。
そういう態度の人間を見ていると、なんだか心のエネルギーがめっちゃ減る感覚があるんですよね。
具体的には、以下のような描写があります。
「直己、いい加減にしろ。何が起きたのかわかっているのか」
思わず明夫が怒鳴ると、直己は手にしていたコントローラーを床に放り出した。口元を曲げ、父親を睨みつけてくる。
「あっ、やめなさい。あなたも、そんな、大きな声を出さないで」
八重子は直己をなだめるように両肩に手を置き、明夫のほうを見上げた。
「説明しろといっているんだ。あのままにしておいて済むと思ってるのか」
「うるせえよ、関係ねえだろ」
ほかに言葉を知らないのか、と明夫は興奮した頭の片隅で考えていた。とんでもないばかだ。
出典:赤い指p51~52
なんと、直己は少女の遺体を放置してですね、テレビゲームをしていたんですよ。
で、その状況を咎められても「うるせえよ、関係ねえだろ」という支離滅裂な言葉しか出てこないわけです。
この後もですね「俺は未成年だからお前らに責任がある」的なセリフも吐いてくるので、読んでいてメンタルがめっちゃ打ちのめされます(笑)。
また、母親の八重子も弱々しい態度しかとらないので、それも結構キツイです。
序盤はこういうネガティブな描写だらけですので、ぜひメンタルが元気な時に読んでください!
加賀の細かい気遣いが良い
加賀は真相を暴くために手段を尽くす執念を持っている刑事なのですが、だからといって、人の気持ちを蔑ろにはしないんですね。
その人間性が存分に出ているシーンがありますので、抜粋してご紹介します。
「どうしてほかの家のことも訊いたんだ?」主婦の家を辞去した後に、松宮は訊いた。「対して意味があるようには思えなかったんだけど」
「そのとおりだ。意味はない」加賀はあっさり答えた。
「えっ、じゃあ、何のために・・・」
すると加賀は立ち止まり、松宮を見た。
「前原家が事件に関わっているという確証は今のところ何もない。空想に近い推理の上での話だ。もしかしたら俺たちは、何の罪もない人々について聞き込みをしているのかもしれない。そのことを考えれば、彼等が不利益を被らないよう最大限の努力をするのは当然のことじゃないのか」
出典:赤い指p186
加賀は前原家を疑ってはいましたが、まだ確証は無かったので、なるべく噂が立ちにくいように関係ない家の情報も訊いていたんですね。
こういう気遣いが、ホント惚れます。
こういう様子を見て、松宮もちょっとずつ加賀を受け入れていきます。
人間とちゃんと向き合った加賀の凄みを感じた
これはネタバレになるので詳細は言えないんですけど、加賀がある人物と真摯に向き合うシーンがあります。
そして、その向き合いから、事件の真相に近づいていくんですよ。
僕はここに、加賀の凄みを感じました。
単に表面的な状況証拠から真相を導くのではなく、人の内面を深掘りすることから真相を導く。
人として凄く魅力的であり、当作品を通じてますます加賀恭一郎が好きになりましたね。
この名言、めっちゃわかる!
話の本筋からはズレるのですが、共感できる名言があったので抜粋してご紹介します。
「大事なことは、理解できなくても尊重することだと俺は思う」
出典:赤い指p303
加賀がある場面を思い浮かべながら発したセリフなんですけど、めちゃくちゃわかります。
僕も全く一緒の考えを、大事にして生きているので。
世の中には理解出来ない言動が溢れていますけど、それを批判したり見下したりするのは傲慢かなと思っています。
こんな感じで、話の本筋からズレた部分に寄り添ってみるというのも、小説の楽しみ方の一つだと僕は思います。
まとめ
今回は、『赤い指』のあらすじ・感想について書いてみました。
かなりオススメの作品ですので、ぜひ読んでほしいです。
できればシリーズ1作目の「卒業」から順に読むことが望ましいですが、『赤い指』は7作目なので、ちょっとシンドいとも思います。
まあ、いきなり『赤い指』から読んでも話の筋はちゃんと理解できますので、いきなりこれから読んでもOKです!
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。