あらすじ・感想

【あらすじ・感想】東野圭吾の『眠りの森』は、切なさが印象的な作品でした【ほぼネタバレ無し】

こんにちは、TKです。

今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『眠りの森』です。

当作品では、バレエダンサーの葉瑠子が正当防衛にて強盗犯を殺してしまった事件の真相を、加賀恭一郎が解き明かしていくという物語が描かれております。

簡単な感想から言うと、なかなか面白かったです。

当作品は加賀恭一郎シリーズの2作品目でして、個人的にはちょっと身構えていたところもありました。

どういうことかと言いますと、1作品目の『卒業』がなかなか難しい内容だったんですよ。

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だから、「『眠りの森』も難しすぎたらどうしよう・・・」と思ったのですが、僕の読解力でも理解できる内容でした。

とはいえ、めちゃくちゃ浅い内容というわけではありません。

事件に関わる人物は多種多様で、かつ数年前の出来事に遡るシーンもありますので、かなりの読み応えがあります。

仲間を想っての行動に胸が熱くなったり、切なさに追い込まれていったりと、感動できる要素もふんだんに含まれていました。

今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。

『眠りの森』の詳細

作品名眠りの森
著者東野圭吾
発売日1992年4月15日
ページ数319(文庫)

あらすじ

葉瑠子が人を殺した。

突然の知らせに、耳鳴りがし、心臓の鼓動が高まる未緒。

殺された男は、なぜバレエ団に侵入したのか?葉瑠子の取った行動は、本当に正当防衛だったのか?

次々と倒れていく、高柳バレエ団のダンサー達。

怒涛かつ不可解な事件を、加賀恭一郎が解き明かす。

主な登場人物

加賀恭一郎(かが きょういちろう)

主人公。

現在の職は刑事ですが、教師として働いていた過去もあります。

剣道がめちゃくちゃ強くて、学生時代は、学生剣道個人選手権で2年連続優勝を果たしました。

真相を突き止めることに対する熱意と洞察力がずば抜けて高く、しばしば関わる人間から煙たがられることもあります。

実写化では阿部寛と山下真司が演じているキャラですが、僕的には阿部寛がピッタリだなと思います。

浅岡 未緒(あさおか みお)

高柳バレエ団のダンサー。

葉瑠子の幼なじみ。

加賀が密かに想いを寄せている女性。

事件がなかなか解決せず、周りのダンサーがイライラを募らせている中でも、常に上品でお淑やかな態度を崩さない魅力があります。

斎藤 葉瑠子(さいとう はるこ)

高柳バレエ団のダンサー。

正当防衛で強盗犯を殺したとされる人物。

未緒の幼なじみで、一緒の部屋に住んでいます。

「陶器のような肌に、くっきりとした眉や大きくて切れ長の目がバランスよく並んでいる」という表現から、美人だと分かります。

正当防衛で強盗犯を殺したと供述していますが、不審な点があって、正当防衛が認められないところからストーリーが展開していきます。

梶田 康成(かじた やすなり)

高柳バレエ団のダンサー。

振付師や演出家としての顔も持っています。

バレエに対して異常な熱量を抱いており、バレエに対して一切の妥協を許しません。それがダンサー達の過剰な練習やダイエットに繋がっています。

ただ、ダンサー達は梶田の能力を信じているので、批判的な声はかなり少ないという人物です。

高柳 亜希子(たかやなぎ あきこ)

高柳バレエ団のダンサーで、プリマです。

プリマとはプリマバレリーナの略で、簡単に言えば団のエースということです。

ただ、非常に謙虚な性格で、周りから褒め称えられることは好きではありません。

柳生 講介(やぎゅう こうすけ)

高柳バレエ団のダンサー。

葉瑠子の正当防衛を立証するために、全力を尽くす姿が印象的です。

感想

では、淡々と感想を述べていきます。

緊張感がずっと途切れない

今回の事件の舞台は、高柳バレエ団という劇団です。

急に侵入してきた謎の男を、葉瑠子が正当防衛で殺してしまうところから物語は始まります。

ただ、この正当防衛に不審な点があってですね、すぐに正当防衛と認めることができないわけです。

ただ、当然警察としても正当防衛で片付けた方が楽なので、躍起になって正当防衛を立証するための情報を集めまくります。

ただ、その情報集めの最中に、なぜかダンサーが襲われる事件が立て続けに起きるんですよ。

葉瑠子の件が全く片付いていないのに、また新たな事件が起きるので、終始緊張感が保たれた状態で読み進めることができました。

小説は没頭できる精神状態をいかに保てるかが、僕は重要だと思っていまして、その点においては結構評価が高いです。

また、全く収集がついていないということもないので、そこまで混乱することはありません。

基本的に、事件はバレエ団の内部だけで起こるので、理解が追いつかないという状態にはなりませんでした。

加賀の人間臭さが好き

加賀は真相を突き止めることに貪欲で、一切の妥協を許しません。

ただ、血の通っていない冷徹な人間という雰囲気は全くなくて、むしろ人間臭いキャラなんですよね。

その人間臭さを特に感じたのが、以下のシーンです。

高柳バレエ団のプリマは白鳥を演じている高柳亜希子だということだったが、加賀はこの黒鳥のダンサーが気に入った。彼の心を動かす何かを持っていた。それが浅岡未緒だったのだ。

彼女の力になれれば、と思う。

出典:『眠りの森』p32

未緒の踊りに魅了された加賀は、事あるごとに未緒の心身を気遣う素振りを見せます。

刑事としての役割を超えた行動もあるのですが、そういうのが僕は好きです。

普段は超マジメな男だからこそ、理屈を超えた行動には心惹かれます。

情報を繋ぎ合わせる技術が凄い

これが東野圭吾さんの真骨頂だと思いますが、多種多様な情報を提供しながらも、それらを全てうまく繋ぎ合わせて、綺麗な結論にまで持っていく技術が本当に凄いです。

物語の舞台はバレエ団と、閉じられた世界ではあるんですけど、調査をしていくにつれて、過去にあるダンサーがニューヨークに留学した経歴が重要っぽい、ということが分かるんですね。

当然、留学先ではあらゆる出来事が起きていますから、情報が一気に増えていくんですけど、最終的にはそれらの情報がちゃんと綺麗に収まるんですよ。

東野圭吾さんと自分は脳のデキが違うということを、読んでいてしみじみ感じます。

仲間想いの言動が良い

作中で何回も語られるんですけど、バレエ団に所属する人達って、とても狭い世界で生きているという特徴があるんですね。

もちろん、その特徴は偏見かもしれませんけど、そういう描かれ方をされていますので、一旦この偏見とも思える特徴を鵜呑みにした上で話を進めていきます。

狭い世界で生きているからこそ、過酷な練習にも耐えられますし、強い仲間意識も芽生えるものです。

詳細を語るとネタバレになるのでフワッとした言い方にしておきますけど、仲間想いの言動がグッときます。

推理のみならず、人情的な部分にもぜひ注目してみてください。

加賀の父が、良い味を出している

今回の作品で、直接的に加賀の父が出てくることはありません。

電話先のみの登場にはなるのですが、今回の事件を解き明かすのには欠かせない重要なヒントを、加賀に与えれくれるんですよ。

ちょっとしか登場しないくせに、重要な鍵になる人物ってめっちゃカッコいいですよね。

加賀の父が良い味を出しているので、読む際は注目してみてください。

ラストシーンが切ない

当作品の見どころは、ラストシーンです。

ネタバレになるので詳細は言えませんが、とにかく切ないです。

でも、希望を感じさせる雰囲気はあるので、後味は良いです。

むしろ、愛情に満ち溢れているので、ラストシーンであることも相まって、とても好印象でした。

このラストシーン、絶対に感動できますので、ぜひワクワクしながら最後まで読み切ってください。

まとめ

今回は、『眠りの森』のあらすじ・感想について書いてみました。

登場人物や展開が多種多様なので、簡単に読み切れる作品ではありませんが、難しい専門用語はほとんど出てこないので、初心者でも楽しめる作品という印象です。

また、推理のみならず、人情に焦点が当たった記述も多く読み応えはバッチリです。

まあまあオススメできる作品なので、加賀恭一郎シリーズに興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

この『眠りの森』、後の作品に繋がっている部分もありますので、読んでおくことで、以降の作品もきっと楽しめますよ。

では、以上となります。

最後まで見て頂き、ありがとうございました。

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