あらすじ・感想

【あらすじ・感想】東野圭吾の『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は、武史が魅力的な作品でした【ほぼネタバレ無し】

こんにちは、TKです。

今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』です。

当作品では、神尾英一という元国語教師が亡くなった事件を、弟であり元マジシャンである武史が華麗に暴いていくという物語が描かれております。

簡単な感想から言うと、なかなか面白かったです!

当作品は被害者の弟である武史が中心となってストーリーが展開していくんですけど、その展開のさせ方が常にオシャレなんですよね。

武史は一流の元マジシャンなので、自身の技術をふんだんに捜査に活かしていくのですが、その様子がとても見応えがあります。

また、東野圭吾さんの作品らしく、結末に至るまでに展開が二転三転する様子があったのも良かったですね。

今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の詳細

作品名ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
著者東野圭吾
発売日2020/11/30
ページ数518(文庫)

あらすじ

ダンボールの山の下で、父の死体が見つかった。

教師だった父は誰からも慕われる人格者であり、殺されるような人ではなかったのに。

娘である真世が事件現場で事情聴取を受けていると、謎の男が侵入してくる。

その男は、何年間も音信不通だった叔父の武史だった。

警察など信用できないと言う叔父は、自らの手で真相を突き止めると断言する。

あらゆるテクニックを駆使する黒い魔術師が、華麗に謎を解いていく。

主な登場人物

神尾 武史(かみお たけし)

当作品の主人公的な存在。

今回事件の被害者である、神尾英一の弟。

天然パーマが髪まで伸びており、無精髭があり、ミリタリージャケットを着ている奇抜な人です。

マジシャンとしての顔を持っているがゆえに、めちゃくちゃ手際が良く、観察力に優れていることが特徴のキャラと言えます。

あるシーンでは、目と指の動きを見ただけで、スマホの暗証番号を把握したほどです。

また、当てずっぽうの褒め言葉を並べ立てて、相手に情報を喋らせるのが癖という厄介な一面もあります。

真相究明のために真世をこき使いますが、純粋に幸せを願っての言動を見せることもあり、憎めない叔父と言えるでしょう。

神尾 真世(かみお まよ)

当作品の主人公的な存在。

30歳。

市谷の不動産屋で勤務。

中学時代に親である英一が、同じ学校で勤務していました。

ただ、親が先生というのは気まずかったようです。

真世は無口な優等生でしたが、英一のことを考えて妥当な生徒を演じていました。

なぜか子供の出産にこだわるシーンがあり、ちょっと引っかかりますが、最後には納得できます。

事件の真相を突き止めるために武史と行動を共にしますが、武史の発言や動作は突拍子もないことばかりで、しばしば面食らってしまいます。

中條 健太(なかじょう けんた)

37歳。

真世と同じ、市谷の不動産屋で勤務。

真世の婚約相手です。

今回の事件がキッカケで会える時間が少なくなったものの、遠くからでも真世をサポートしようとする懸命さを感じます。

神尾 英一(かみお えいいち)

真世の父。

元国語教師。

今回の事件の被害者です。

卒業した生徒の相談を聞くといったことからも、かなり面倒見の良い人間であることが分かります。

葬儀に沢山の元生徒が訪れかことからも、相当に慕われていたことは間違いありません。

どう考えても、殺されるような人には見えないという印象です。

原口 浩平(はらぐち こうへい)

英一の元生徒。

原口商店という酒屋を営んでいます。

英一の遺体を発見した第一発見者です。

釘宮 克樹(くぎみや かつき)

英一の元生徒。

幻脳ラビリンスという漫画の作者。

中学時代は誰からも相手にされないような生徒でしたが、漫画で一発当てたことから、同級生が私利私欲のために擦り寄ってくるようになりました。

ただ、釘宮自身はそういった手のひら返しに反発しているということはなく、意外とすんなり周りの変化を受け入れている印象です。

九重 梨々香(ここのえ りりか)

英一の元生徒。

有名広告代理店「報通」の社員。

釘宮のマネージャー的存在。

見た目が美しい女性です。

中学時代は釘宮など見向きもしませんでしたが、漫画で成り上がった瞬間に連絡を取ってくるような狡猾さがあります。

池永 桃子(いけなが ももこ)

英一の元生徒。

旧姓は本間 桃子(ほんまももこ)。

真世の親友であり、葬儀を手伝ってくれるほどの仲です。

杉下 快斗(すぎした かいと)

英一の元生徒。

出自が金持ちの家で文武両道だったことから、エリート杉下と呼ばれています。

IT企業を立ち上げており、会社は軌道に乗っているようです。

柏木 広大(かしわぎ こうだい)

英一の元生徒。

地元の建築会社の副社長。

幻脳ラビリンスの人気にあやかって町おこしをしようと計画していますが、九重に拒否されてしまいます。

それでもめげずに、何度もアタックする執念深さが特徴的なキャラですね。

津久見 直也(つくみ なおや)

英一の元生徒。

中学の頃に白血病で亡くなっています。

父親が教師であることをイジられ悩んでいる真世に対して、「そんなの気にするな。お前はお前だろ」と、男らしいセリフを吐ける生徒でした。

釘宮の才能に惚れ込んでいまして、釘宮と津久見は親友と言える仲でした。

牧原 悟(まきはら さとる)

英一の元生徒。

地銀の三つ葉銀行に勤めています。

印象的なシーンが少なく、地味な人物という印象です。

感想

では、淡々と感想を述べていきます。

武史のパフォーマンスを楽しむ作品

当作品を端的に表現するなら「武史のパフォーマンスを楽しむ作品」と言えますね。

武史は元マジシャンということもあって、抜群に手際が良くて、かつ洞察力もめちゃくちゃ優れています。

で、その凄さに真世がびっくりするというのが、当作品の構図と言えます。

真世は普通の女の子なので、真世に感情移入しながら読み進められるという感じでしたね。

武史のパフォーマンスなんですけど、いずれもリアリティがあって凄く読み応えを感じました。

特に好きなのが、話術ですね。

巧みな話術を駆使することによって、話し相手から情報を引き出すシーンが何回かあるんですけど、いずれも秀逸です。

普通に話しているように見えるんですけど、そこにはちゃんと仕掛けがあるんですよ。

これ、現実世界でも使っている人がいそうだなと思えるくらいリアリティがあって面白かったですね。

時事ネタが組み込まれており、親近感が湧く

2020/11/30と、コロナ禍真っ只中に出版されたこともあり、コロナに絡めた時事ネタが多かった印象です。

例えば英一の葬儀をする時に、オンライン葬儀の話が出てくるんですよ。

オンライン葬儀とは、葬式場に足を運ばずとも遠方からモニターにて葬儀に参加できるサービスのことで、現実世界でも提供されているものです。

こういった時事ネタが出てくると、なんだか親近感を覚えるんですよね。

そして、こういった時事ネタを単に登場させるだけでなく、真相を暴く鍵にちゃんと繋げてくるのが、東野圭吾さんの凄さだと言えます。

なぜかサムライ・ゼンという呼び名を嫌っている

武史はマジシャン時代に「サムライ・ゼン」と呼ばれていました。

で、なぜかは分からないのですが、その呼び名を異様に嫌っていることが分かる描写があるんですよ。

結局、最後まで嫌っている理由は分からないままです。

ただ、裏を返せば、「理由は後々の作品で明らかにしていくよ」という意思表示ともとれるので、今後の続きが楽しみにもなりました。

夫婦間の関係を描いた描写がリアルすぎ

物語の途中で、ある夫婦の関係を詳細に描いているシーンがあるんですけど、かなりリアリティがあってですね、なんだか心が締め付けられます(笑)。

東野圭吾さんは描写力がエグいので、良くも悪くも、文字だけで人の感情を揺さぶれるんですよね。

この話は事件の真相と大きく関わっているわけじゃないんですけど、脇道に逸れたところに魅力を感じてみるのも、小説の一つの楽しみ方かなと僕は思います。

まとめ

今回は、『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』のあらすじ・感想について書いてみました。

僕は完全に、武史のファンになってしまいましたね!

なかなかクセが強いんですが、言動には一貫性があってですね、なんだかずっと見ていたいと思わせてくれるキャラでした。

次回作も、絶対に読みたいです。(追記:次回作も読みました!読んだ感想を書いたページを下に貼っておきます。)

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では、以上となります。

最後まで見て頂き、ありがとうございました。

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