こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『宿命』です。
当作品では、ある事件の真相を、子どもの頃に抱いた謎と共に解き明かしていくという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、なかなか良かったです!
僕が好きな「切なさ」が滲み出ていましたし、ライバル同士の戦いという構図は楽しみながら読めました。
当作品の主人公は「勇作」という男でして、そのライバルは「晃彦」という男です。
この2人は子どもの頃から仲が悪く、良くも悪くもお互いを意識した生活を送っていたんですね。
ただ、仲が悪いといっても心底嫌っている程ではなくて、たまに普通の会話もします。
その関係は、まさにライバルです。
この2人は高校卒業を機に全く会わなくなるのですが、ある事件をキッカケに再会します。
その時すでに晃彦は結婚していたのですが、なんとその相手は勇作の元恋人でした。
はい、なかなか痺れる展開ですよね。
ストーリーはやや込み入っていましたが、構図自体はわかりやすく、そしてあっと驚く展開もありましたので、なかなか良かったです。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『宿命』の詳細
作品名 | 宿命 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 1990年 |
ページ数 | 372 |
あらすじ
サナエさんが、窓から落ちて亡くなった。
子どもの頃に負った心の傷は、大人になるにつれて過去のものとなった。
しかし、ライバルとの再会を果たした時に、その傷が再び疼き出す。
「重要なのは、自分にはどういう宿命が与えられているかだ」
切なくも力強い信念を描いたミステリー。
主な登場人物
和倉 勇作(わくら ゆうさく)
主人公。
小学校入学前に、サナエという女性とレンガ病院で仲良くなりました。
サナエの年齢は不明でしたが、母親ほど年が離れているようでした。
大人になった勇作は、警察官の道を選びます。
晃彦と同じ小学校であり、彼に対してなんとなく嫌な奴という印象を抱いていました。
サナエ
レンガ病院を徘徊していたおねえさん。
精神的な病気で入院しているようでした。
ある日病室の窓から落ちてしまい、亡くなりました。
瓜生 晃彦(うりゅう あきひこ)
直明の息子。
先妻の子供なので、現在の母である亜耶子と血は繋がっていません。
勉強もスポーツも圧倒的にできる子供でしたが、鼻につく態度をとっていたので友達はいませんでした。
高校を卒業後は、医学の道に進みました。
瓜生 美沙子(うりゅう みさこ)
晃彦の妻。
旧姓は江島。
瓜生直明を通じて晃彦と知り合い、交際を重ねたのちに結婚しました。
周りからは玉の輿と羨ましがられています。
父の勧めでUR電産を受けたら、なぜか採用されました。
江島 壮介(えじま そうすけ)
美沙子の父。
過去に事故を起こし入院したのですが、なぜか途中で上原脳神経外科病院に入院先を変更します。
退院後、なぜか大手のUR電産に就職が決まります。
和倉 興司(わくら こうじ)
勇作の父。
警察官。
瓜生 直明(うりゅう なおあき)
晃彦の父。
食道癌で入院していましたが、物語の途中で亡くなります。
瓜生 和晃(うりゅう かずあき)
UR電産の創業者。故人。
瓜生 亜耶子(うりゅう あやこ)
直明の妻。
瓜生 弘昌(うりゅう ひろまさ)
直明の息子。
瓜生 園子(うりゅう そのこ)
直明の娘。
須貝 正清(すがい まさきよ)
直明の死後、UR電産の新社長になった男。
松村 顕治(まつむら けんじ)
UR電産の常務。
直明の片腕でした。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
話を整理しながら読んでください!
『宿命』は驚くような展開や謎めいた展開が多く、ワクワクしながら読める良作です。
ただ、登場人物がまあまあ多いので、なんとなく読んでいると混乱する原因になります。
また、会社内での派閥争いなんかもあって、その辺りも少し複雑です。
僕はこういう場合、メモを残しながら読んでいます。
メモしておくと、忘れたことを思い出すキッカケになりますからね。
とはいえ、めちゃくちゃ複雑な話でもないので、記憶力や読解力が優れている方ならなんの準備も無しに読みきれそうです。
愛に関する考察が好き
僕は小説を読んでいる時にいつも「愛に関する考察」に着目してしまいます。
それが、物語の本筋とは関係なくてもです。
『宿命』の中にも、そういった記述があったので、抜粋してご紹介します。
客観的に考えて、晃彦に欠点らしきものはない。結婚してからも、交際時代と変わらずいろいろと気遣ってくれるし、彼女が望めば大抵のことはかなえてくれる。夫婦といえども礼儀を無視したり、プライバシーを侵害したりすることもない。結婚すれば無神経で無作法になる男性が多い中で、そういう意味では理想的な夫といえた。
しかし人を愛するための条件とは、そういうものではないと美佐子は思う。少なくとも自分は違う。
必要なことは、相手を理解できていることだ。
出典:宿命p28
条件が完璧でも、それって意外と愛に繋がらないですよね。
こういう答えのない考察が、僕は好きです。
『変身』を感じる記述あり
東野圭吾さんの他作品に『変身』というものがあります。
どんな作品かといいますと、頭を撃ち抜かれ脳の一部が欠損した青年が、奇跡的に生き残るも性格が豹変してしまうという内容になっております。
じつは『宿命』の中に「銃弾を頭に受けながら、死なずにがんばっている患者」という記述があってですね、それを見た時『変身』を感じました。
また、『変身』は『宿命』の1年後の作品と考えると、東野さん自身も繋がっている感覚があったと思います。
東野圭吾さんの作品にはですね、こんな感じで他作品を想起させる記述が結構あります。
だから何?って感じかもしれませんけど、こういうのを見つけると、一人の作家をディグる楽しみを感じるものです。
このセリフ、痺れる
最後に、人生観に影響を与えてくれそうなセリフをご紹介します。
重要なのは、自分にはどういう宿命が与えられているかだ
出典:宿命p368~369
自由に生きることが素晴らしいみたいな価値観が広がっていますけど、宿命に従う人生も悪くないかなと思いました。
まとめ
今回は、『宿命』のあらすじ・感想について書いてみました。
ライバル・宿命・切なさを描いた傑作でしたので、ぜひ読んでみてください。
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。