こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『名探偵の掟』です。
当作品では、様々なミステリー作品のお約束やありがちな設定を、めちゃくちゃディスるという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、斬新かつメタい内容で面白かったですね。
ミステリーって、いろんな設定があるじゃないですか。
例えば「密室」といえばミステリーの王道の設定ですけど、安易に密室を作ってしまう作者を『名探偵の掟』ではめちゃくちゃにディスっています(笑)。
東野圭吾さんはミステリー作家なので自分の首を締めるような作品とも言えますが、逆に「俺は安易な設定のミステリーなんて絶対書かないよ」という意思表示とも受け取れました。
また、安易と言われながらも普通に感心しちゃうような設定もあったので、純粋な意味の読み応えもありましたね。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『名探偵の掟』の詳細
作品名 | 名探偵の掟 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 1996年2月25日 |
ページ数 | 329(文庫) |
あらすじ
名探偵「天下一大五郎」が、華麗に謎を解き明かしていく。
しかしその謎は、使い古された安易なものだった。
そうだとしても、登場人物である彼はツッコむことなど許されない。
陳腐な設定を真面目な顔で解き明かしていく、痛快かつメタいミステリー。
主な登場人物
天下一大五郎(てんかいちだいごろう)
名探偵。
安易な設定を嫌っていますが、特に密室が嫌いなようです。
大河原番三(おおがわらばんぞう)
県警本部捜査一課の警部。
天下一大五郎を目立たせるために、あえて的はずれな操作をします。
感想
当作品は、以下14の短編から構成されています。
- 第一章 密室宣言
- 第二章 意外な犯人
- 第三章 屋敷を孤立させる理由
- 第四章 最後の一言
- 第五章 アリバイ宣言
- 第六章 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論
- 第七章 切断の理由
- 第八章 トリックの正体
- 第九章 殺すなら今
- 第十章 アンフェアの見本
- 第十一章 禁句
- 第十二章 凶器の話
- エピローグ
- 最後の選択
短編ごとに、ディスる要素が変わっていると思ってください。
では、短編ごとに淡々と感想を述べていきます。
第一章 密室宣言
タイトルからわかるとおり、安易な密室をディスる短編です。
「これは密室ですね」という宣言を「厚顔無恥な宣言だ」と言い切るところに笑いました(笑)。
オチが酷いんですけど、それもわざとやっている感じです。
第二章 意外な犯人
意外性のある人間を犯人にするだけのミステリーをディスった短編です。
この短編の中で「こいつは美人じゃないから犯人じゃない」という暴言があるんですけど、個人的にはこの暴言がめっちゃ好きです(笑)。
まあたしかに、女性が犯人の場合、基本的には美人ですもんね。
ちょっとだけ『変身』を思わせる描写がありましたが、完成度で言えば圧倒的に『変身』の方が上でした。
第三章 屋敷を孤立させる理由
孤立ものをディスった短編でして、まあ密室にちょっと近いですね。
「雪で閉ざされる」という表現があったので、『ある閉ざされた雪の山荘で』が想起されました。
もちろん、『ある閉ざされた雪の山荘で』は単なる孤立ものではなくて、なかなかに複雑な作品になっています。
当短編のラストのオチはめちゃくちゃでした。
第四章 最後の一言
安易なダイイングメッセージものをディスった短編です。
読者にとってかなり不利な内容になっている部分があってですね、そこをツッコんでいました。
また、最後のオチは酷いです(笑)。
第五章 アリバイ宣言
アリバイがあればあるほど、ソイツが怪しく見えてくることをイジった短編です。
作中に「アリバイが無いから犯人じゃない」という断言に笑いましたね(笑)。
最後の方には「新しいテクノロジーが出てくると、アリバイを作るのも大変」という苦悩が描かれていたのが印象的でした。
極端な話、ワープできる技術が生まれたらアリバイなんて誰にも無いようなものですからね。
第六章 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論
これは、映像化した際のご都合主義をディスった短編ですね。
「映像化すると、大抵原作よりつまらなくなる」なんてことが書いてあったので、「そんなこと言って大丈夫?」と思いました。
なお、この短編のオチは皮肉が効いていてめっちゃ好きです。
第七章 切断の理由
首切り死体をイジった短編ですね。
とにかく、オチが酷いです(笑)。
第八章 トリックの正体
これは、あるトリックをディスった短編です。
ただ、僕は普通にこのトリックを見抜けませんでしたね。
あと、「屋敷の見取り図なんて誰も見ないだろ」的な吐露があったのですが、たしかにと思ってしまいました。
第九章 殺すなら今
歌や伝統に則って殺しをする物語をディスった短編ですね。
有名な作品に『そして誰もいなくなった』が上げられます。
『そして誰もいなくなった』は、マザーグースというイギリスの動揺に則って殺しが行われる作品として有名です。
ただ、『そして誰もいなくなった』はこういう系統の最初の作品なので、『そして誰もいなくなった』自体はディスられていません。
第十章 アンフェアの見本
読者にとってアンフェアな書き方をする作品をディスった短編です。
叙述トリックのように読者を騙す作品って相当数ありますけど、それをイジっている感じですね。
そのトリックに則ってこの短編も構成されているのですが、僕は好きでしたね。
アンフェアですが、普通に楽しめたのでOKです。
第十一章 禁句
この短編では、言っちゃいけないことを言っています。
また、安易なトリックが使われているんですけど、僕は騙されちゃいましたね。
まだまだ小説の読み込みが足りないと思わされました。
第十二章 凶器の話
凶器にまつわる短編なのですが、なかなか勉強になる内容でしたね。
オチは最低過ぎて笑えますが、物語の本筋はなかなか読み応えありました。
エピローグ
これはですね、ここまでしっかり読み込んだ方ならオチの大筋は読めると思います。
最後の選択
エピローグと同様で、ここまでしっかり読み込んだ方ならオチの大筋は読めると思います。
ただ、ちょっとゾッとするオチに仕上がっていましたので、それは意外性あって良かったです。
まとめ
今回は、『名探偵の掟』のあらすじ・感想について書いてみました。
こういうメタい作品は珍しいので、斬新な気持で読めましたね。
内容も面白かったので、オススメできる作品です。
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。