こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『プラチナデータ』です。
当作品では、国民のDNAデータを徹底管理することで、あらゆる犯罪を解決する「DNA捜査」の是非を問う趣旨の物語が描かれています。
簡単な感想から言うと、社会派の内容で面白かったですね。
プラチナデータのテーマは、DNA捜査です。
当作品内では、DNAの解析によってほぼ同じ顔のモンタージュ写真を作れる技術が存在します。
また、全国民にDNAデータを登録させることで、国民を徹底的に管理しようとする動きもあるんですね。
なんでDNAデータを登録させようとしているかというと、全国民のDNAデータが国に登録されれば、犯罪者を特定するのが極めて簡単になるからです。
現場に髪の毛一本でも落ちていれば、そこから人物を割り出せますので。
ただ、これってちょっと気持ち悪いですよね。
どこに行っても自分の痕跡が残るということですから、プライバシーの観点から見ればアウトっぽい感じがします。
理屈を優先するのか、それとも感情を優先するのか。
現代社会にも通じる倫理的な問題を、東野圭吾さんはプラチナデータを通して提示したわけです。
また、こういった倫理的な話ばかりではなく、愛情や人情を感じるシーンも盛り込まれており、読み応えがありました。
なお、プラチナデータは映像化されている作品でもありますので、そのうち観てみたいです。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『プラチナデータ』の詳細
作品名 | プラチナデータ |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2010年6月30日 |
ページ数 | 493(文庫) |
あらすじ
DNA捜査があれば、犯罪は防げる。
革命的な技術に絶対の信頼を寄せる神楽龍平は、事件現場に残されたDNAを解析する。
すると、出来上がったモンタージュ写真は自分の顔であった。
DNA捜査は、本当に完璧なのか?
全国民のDNAを保存させるなど、許されるのか?
読み手の倫理観を問う、社会派ミステリー。
主な登場人物
神楽 龍平(かぐら りゅうへい)
主人公。
特殊解析研究所の主任解析員。
DNA捜査にかなりの信頼を置いています。
また、「DNA捜査があるのに犯罪を起こす奴は浅はかだ」と言い切るところから、非情さのようなものを感じます。
ただ、シンプルに犯罪が減ることを望んでいるだけなので、悪人ではありません。
事件現場に残されたDNAを解析したら、なぜか自分のモンタージュ写真が出来上がってしまいました。
事件の真相を突き止めるために、やむを得ず逃走劇を繰り広げます。
リュウ
龍平のもう一つの人格。
強いショックを受けた時や、反転剤という薬を用いた時に現れます。
現れている時間は全て絵を描くことだけに費やしていますが、その意図は不明確です。
神楽 昭吾(かぐら しょうご)
龍平の父。
孤高の陶芸家と呼ばれていました。
個展をひらけば、高いものから売れていくほどの売れっ子です。
ある番組の企画で、自分の作品と贋作の違いが見抜けなかったことに絶望して、自殺します。
浅間 玲司(あさま れいじ)
捜査一課の刑事。
駒扱いされることを嫌い、ルールを無視した行動を取り続けます。
強引な人物ですが、曲がったことはしないので、印象は良いです。
志賀 孝志(しが たかし)
警視庁特殊解析研究所の所長。
浅野らを駒のように扱う様子から、傲慢な人物という印象を受けます。
蓼科 早樹(たてしな さき)
十字方程式を暗算で解ける屈指の天才。
DNA検査のプログラムを開発しています。
顔の痣に強いコンプレックスを抱いており、いじめられた経験もあることから、人と関わるのが好きではありません。
水上 洋次郎(みずかみ ようじろう)
新世紀大学病院の脳神経科の教授。
神楽龍平の主治医で、蓼科早樹の担当医です。
欧米人の血が混じっているように見えるが、純日本人です。
富山(とやま)
死体の第一発見者。
警備員として働いていたら、蓼科兄妹の死体を発見しました。
白鳥 理沙(しらとり りさ)
蓼科兄妹が亡くなった後に、アメリカから特殊解析研究所に派遣されてきた女性。
早樹が作ったとされる「モーグル」というプログラムを探すために、龍平の逃走劇に協力します。
スズラン
リュウの恋人と名乗る謎の少女。
龍平がどこにいるのかがテレパシーで分かるという発言をするところから、かなりミステリアスな印象を受けます。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
思索にふける楽しさがある作品
プラチナデータはストーリー自体が普通に面白いんですけど、それ以外にも、思索にふける面白さもある作品です。
DNAを国が完璧に管理するなど許されるのか?という問題がテーマになっているのですが、もちろん、現実世界ではそんな話は出ていません。
ただ、監視カメラで似たような話は出ていますから、決して荒唐無稽な問いではないんですね。
こんな感じで、読者に考えさせる時間を与える本が僕は好きなんですよ。
読書って、一方的に何かを与えられるものではなくて、与えられたものを踏まえて思考するものだと思っています。
だからこそ、プラチナデータのような社会派の作品には読み応えを感じますね。
人の手で生み出すことの意味とは
龍平の父は陶芸家なんですけど、精巧なロボットの登場により、全く一緒の陶芸品が作られるという描写があります。
これも、東野圭吾さんは読者に問いを投げかけているわけです。
人の手で生み出す意味って、なんなんだろうねと。
全く同じ陶芸品がロボットで作れてしまうのであれば、元になった陶芸家は不要なのでしょうか?
なんか、そうじゃない気がしますよね。
AIの発達によって、今や小説や絵を自動で生み出すことが可能となりました。
ただ、だからといって、小説家や絵師が不要になることはありません。
どれだけ優れたAIが登場したとしても、東野圭吾さんの作品は読み続けたいですからね。
プラチナデータを通して、改めて作り手の想いに寄り添う大切さに気付かされました。
まとめ
今回は、『プラチナデータ』のあらすじ・感想について書いてみました。
社会派のミステリーが好きな方は絶対にハマると思いますので、ぜひ読んでみてください!
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。