こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『麒麟の翼』です。
当作品では、日本橋の上で胸を刺されたサラリーマンが倒れていた事件を、加賀が一切の妥協を許さずに暴いていくという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、道徳の教科書にしていいレベルの内容でした。
詳細を語るとネタバレになるのでザックリと書きますが、現実と向き合うことの必要性を改めて思い出させてくれましたね。
人生を生きていく中で、自分にとって後ろ向きな事実というものが、誰にでも生じると思います。
で、その後ろ向きな事実への対応から、時に逃げ出したくなるのが人間です。
だけど、目を逸らしたって、その後ろ向きな事実は一生自分に付きまとってくるんですよね。
そんな人生の真理を、壮大なストーリーと共に描いているのが、今回ご紹介する『麒麟の翼』です。
かなりの傑作でしたので、自信を持ってオススメできます。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『麒麟の翼』の詳細
作品名 | 麒麟の翼 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2011年3月3日 |
ページ数 | 372(文庫) |
あらすじ
ああ、また酔っぱらいだよ。
そう思った警官が倒れている男に近づくと、胸にはナイフが刺さっていた。
瀕死の男は、なぜ日本橋の麒麟像まで歩みを進めたのか。
その背景には、凄惨な過ちが潜んでいた。
「こんな中途半端な形で事件を終わらせても、誰も救われない」
洞察力と信念を武器にして、加賀恭一郎が真相を暴く。
主な登場人物
加賀 恭一郎(かが きょういちろう)
主人公。
あることをキッカケに、練馬署から日本橋署へ異動となりました
事件の真相をうやむやにすることに極度の嫌悪感を示す人物で、真相を突き止めることには一切の妥協を許しません。
亡くなった父親の三回忌など必要ないといった考えを持っており、そのことで看護師に説教される場面があります。
良くも悪くも、信念を貫き通す男という印象ですね。
僕は、加賀のような男はとてもカッコいいと思います。
松宮 脩平(まつみや しゅうへい)
警視庁捜査一課に所属している刑事。
加賀恭一郎の親戚でもあります。
松宮の母(克子)には兄がいて、その兄の名前は加賀隆正と言います。隆正は、加賀恭一郎の父です。
前々作の『赤い指』でタッグを組んでいましたが、今回も組むこととなりました。
加賀の補佐役という印象が強いキャラなので、やや優秀と言えるくらいの立ち回りに終始します。
青柳 武明(あおやぎ たけあき)
今回の被害者。
胸を刺された状態で、日本橋にある麒麟像にもたれかかっていました。
亡くなるシーンからスタートするので、序盤はどんな人物なのかよくわかりません。
ただ、ストーリーが進むにつれて、だんだんと人柄が見えてきます。
青柳 悠人(あおやぎ ゆうと)
被害者の息子。
高校生。
父が殺されたというニュースのせいで、学校に居づらくなります。
良くも悪くも毅然とした態度を保っていることが多く、加賀や松宮に対しても強気でいるシーンが印象的でした。
青柳 史子(あおやぎ ふみこ)
被害者の妻。
夫が亡くなった様子を見て、取り乱してしまいます。
常識のある女性なので、良くも悪くも印象は薄いです。
青柳 遙香(あおやぎ はるか)
被害者の娘。
悠人の妹。
ことある事に泣いてしまいますが、父が殺されたという状況なので、それが普通の反応かなと思って見ていました。
生前の父とちゃんと向き合ってこなかったので、亡くなったことをキッカケに、向き合ってこなかったことを後悔するシーンが印象的でした。
八島 冬樹(やしま ふゆき)
青柳が刺された事件の後に職質された男。
職質から逃げたところをトラックに跳ねられ、意識不明の重体になりました。
八島の所持品から青柳の財布が見つかったことから、ほぼほぼ犯人で間違いないないだろうと、警察から思われます。
また、口下手で人付き合いが苦手です。
バイトの面接を落ちたことで自暴自棄になるほどメンタルが弱い、という一面もあります。
中原 香織(なかはら かおり)
八島冬樹の恋人。
福島県の養護施設で育ってきた過去があり、八島とはそこで出会っています。
警察や世間は八島が犯人だと結論付けていますが、香織はその結論を全く信じていません。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
道徳的な内容がめっちゃ良かった
『麒麟の翼』のテーマは「悲劇からの希望と祈り」だそうです。
人生を生きていれば、誰だって悲劇的な現実が訪れることがありますよね。
ただ、「その悲劇から決して目を逸らしてはいけないし、必ずその先に希望はあるんだ」というメッセージを、『麒麟の像』は訴えているようでした。
僕は『麒麟の翼』を読み終わった後、とても前向きかつ誠実な気持ちになりましたね。
まあ「僕は」というより、おそらく、『麒麟の翼』を読んだ大半の人が前向きかつ誠実な気持ちになるでしょうね。
青柳武史は瀕死の状態になりながらも、麒麟の像まで歩いていったわけですが、その背景にはある力強いメッセージが込められています。
そのメッセージの全容を知った時、あなたは必ず清々しい気持ちになりますし、『麒麟の翼』を読んで良かったと心の底から思えるはずです。
父の情報を答えられない無力感が、なんか共感できる
青柳武史が亡くなった真相を暴くために、加賀たちは家族の元に話を伺いに行きます。
ただ、家族の誰もが父の情報をまともに伝えられなかったんですよ。
その様子がわかるシーンを、抜粋してご紹介します。
「あたしたちって、だめだよね」
何が、と悠斗は訊いた。「何がだめなんだ」
だって、と彼女は続けた。「お父さんのこと、何も知らないじゃない。刑事さんから何を訊かれても、ひとつもまともに答えられない。知らない、聞いたことない、見たことない。こればっかり。きっと馬鹿にしてるよ、刑事さんたちも」
出典:麒麟の翼p80
青柳遥香が、父親の情報をまともに答えられないことを情けなく感じるシーンですが、なんか共感してしまいましたね。
仮に今、僕も父の情報を誰かに根掘り葉掘り訊かれたら、大した情報を答えられないので。
ただ、別に父親と仲が悪いってわけじゃないんですよ。
今は別々に暮らしていますけど、実家に帰った時に会うことはありますし、たまにですが一緒に旅行も行きます。
ただ、内面を深く知っているかと問われたら、あまり自信はありません。
まあこれもリアルな家族像だと思いますから、このままで特に問題ないかなとも思っています。
ただ、亡くなった時にちょっと後悔しそうではありますが。
男は金を払って手間を省く?
中原香織の言葉で印象的なものがありましたので、抜粋してご紹介します。
「女っていうのは、少しでも得をするのが大好きなんです。だから試写会の申し込みなんかも、面倒がらずにやっちゃう。その点、男の人って、手間のかかることをするぐらいなら、お金を払ったほうがいいっていう人のほうが多いでしょ」
出典:麒麟の翼p238
加賀との会話の中でふと出てきた主張でして、まあ大してストーリーに深く関わるものじゃないです。
それに、決して科学的な話でもありません。
ただ、僕はこういう「経験に則った話」がなんか好きなんですよね。
その人の信念や人生が垣間見れる気がするので、なんだか尊さを感じるんですよ。
この感覚、わかる人がいたら嬉しいです。
過ちと向き合うことが大事
ネタバレになりますので前後は省きますが、加賀のある一言がめちゃくちゃグッときましたので、抜粋してご紹介します。
「人は誰でも過ちを犯す。大事なことは、そのこととどう向き合うかだ」
出典:麒麟の翼p352
このメッセージを理解させるために、『麒麟の翼』が書かれたと言っても過言ではありません。
僕は今まで過ちを犯してきましたし、これからも犯すかもしれません。
だけど、その過ちと真摯に向き合い、やれることをやり切りたいと思いました。
まとめ
今回は、『麒麟の翼』のあらすじ・感想について書いてみました。
最後の方で加賀が「決して忘れてはいけないのは◯◯だ」と言い切るセリフがあって、それがめちゃくちゃカッコいいので、ぜひお手にとって最後まで読んでほしいです。
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。