こんにちは、TKです。
今回ご紹介するのは、東野圭吾さんの『祈りの幕が下りる時』です。
当作品では、アパートで女性の腐乱死体が発見された事件を、加賀恭一郎の類まれなる執念によって解き明かしていくという物語が描かれております。
簡単な感想から言うと、涙腺が弱い方なら号泣できるかなと思いました。
僕は感動しても涙が出てこない人間なので泣けませんでしたが、心では泣けましたね。
今回の作品のテーマは「家族」と言えるでしょうか。
事件の背景には家族の愛が潜んでいましたし、逆に家族に対する憎悪が描かれているシーンもあれば、加賀恭一郎が自分の母親の過去に触れるシーンもあります。
つまり、良いシーンも悪いシーンもあってですね、かなりの読み応えがあります。
また、『祈りの幕が下りる時』は映画化されています。
現時点ではまだ映画を観ていませんので、そのうち観たいなと思います。
また、『祈りの幕が下りる時』では過去に登場した人物や話が当たり前のように出てきますので、より内容を楽しむためにはですね、シリーズの過去作を1度全部読むことをオススメします。
ちなみに加賀恭一郎シリーズの1作品目は、『卒業』です。
ただ、『祈りの幕が下りる時』は9作品目なので、順番に読もうと思ったら結構大変なのも事実です・・・。
まあ、いきなり『祈りの幕が下りる時』から読んでも話の筋は概ね理解できるので、順番に読むのが面倒であれば、すっとばして当作品から読んでもOKです。
今回の記事では、あらすじ・登場人物・感想を述べていきますが、ネタバレになるような情報はほぼほぼ無いので、安心して読み進めてください。
『祈りの幕が下りる時』の詳細
作品名 | 祈りの幕が下りる時 |
---|---|
著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2013年9月13日 |
ページ数 | 443(文庫) |
あらすじ
なんか上から、臭い液体が垂れてくる。
アパートの住人からの苦情を受けて上の部屋を開けてみると、そこには女性の腐乱死体が放置されていた。
事件を追っていく過程で、加賀恭一郎は母の過去に繋がる手掛かりを見つけてしまい、動揺する。
なぜ加賀恭一郎は、日本橋に新参者として降り立ったのか。
家族の愛と憎悪が渦巻くミステリーに、あなたは必ず心を奪われる。
主な登場人物
加賀 恭一郎(かが きょういちろう)
主人公。
事件の真相をうやむやにすることに極度の嫌悪感を示す人物で、真相を突き止めることには一切の妥協を許しません。
『新参者』の中で練馬署から日本橋署へ異動となった話が語られているのですが、その異動の理由が今回明らかとなります。
松宮 脩平(まつみや しゅうへい)
日本橋署捜査一課に所属している刑事。
加賀恭一郎の親戚でもあります。
松宮の母(克子)には兄がいて、その兄の名前は加賀隆正と言います。隆正は、加賀恭一郎の父です。
前々々作の『赤い指』でタッグを組んでいましたが、今回も組むこととなりました。
宮本 康代(みやもと やすよ)
「セブン」というスナックの女将。
加賀の母である百合子を十数年雇っていました。
百合子がアパートで亡くなった時の第一発見者でして、それをキッカケに加賀と接点を持つようになりました。
田島 百合子(たじま ゆりこ)
加賀恭一郎の母。
瓜実顔の美人。
加賀が幼い頃に、うつ病を患ってしまいます。
最終的には「自分は妻としても母としても失格だ」と思い込むようになり、家族をおいて逃げるように仙台へと旅立ちました。
仙台で「セブン」というスナックの中居の募集に申し込み、結果的に十数年務めることになります。
綿部 俊一(わたべ しゅんいち)
百合子と深い仲にあった客。
百合子が亡くなった際、加賀恭一郎まで連絡を繋いでくれました。
ただ、百合子と深い仲にあったにも関わらず線香をあげることもせず、音信不通になってしまいます。
謎が多く、序盤は人物像がほとんど分からないキャラです。
押谷 道子(おしたに みちこ)
今回の被害者。
メロディエアという家事代行サービスの会社で働いていました。
同僚からの評判がとても良く、殺されるような人には見えないという印象のキャラです。
浅井 博美(あさい ひろみ)
有名な演出家。
芸名は「角倉博美」
母に捨てられ幼少期は多大な苦労を強いられたことから、母を恨んでいます。
自身が手掛ける芝居に参加する子役を稽古するためとして、加賀恭一郎に剣道の指導を頼んだ過去があります。
浅居 厚子(あさい あつこ)
博美の母。
夫の経済的な問題を、娘に愚痴るような毎日を送っていました。
また、現在はレストランで無銭飲食をした挙げ句に暴れるといったように、かなり酷い人間性を携えているキャラと言えます。
感想
では、淡々と感想を述べていきます。
家族の絆は偉大だ
『祈りの幕が下りる時』のテーマは「家族」です。
ネタバレになるので詳細な記述は控えますが、どんなに大変な状況であっても、どんなに遠く離れていても、途切れない絆はあるんだなと思わせてくれる作品でした。
やっぱ人生って理屈じゃない。
そんな感覚になりました。
読み切るには集中力が必要
『祈りの幕が下りる時』は読み応えがありすぎるがゆえに、集中力が必要な作品とも言えますね。
幼少期の加賀、青年時代の加賀、そして現在の加賀といったようにですね、時代がかなり移り変わるので、ちゃんと読んでいないと理解が追いつかないかもです。
また、東野圭吾さんの作品らしく、推理の状況が二転三転しますので、途中で結構混乱しました・・・。
僕は小説を読む際に気になった箇所をメモしているんですけど、よろしければぜひあなたも、メモをしながら読み進めてみてください。
メモの読み返しが、きっと理解の助けになりますよ。
加賀の人柄がめっちゃカッコいい
他の作品でも度々描かれる描写なのですが、加賀は損得勘定を抜きにして、他人を助けることのできる男なんですよ。
その人柄が分かるシーンが『祈りの幕が下りる時』にもありましたので、抜粋してご紹介します。
ある講義で、茂木が講師から叱責を受けたことがあった。
居眠りをしていただろう、というのだった。否定したが認められなかった。すると突然、後ろの席から声が上がった。
彼は居眠りなどしていません。シャープペンシルの調子が悪く、芯を入れるのに手間取っていたのです。
まさに救いの声だった。それを聞いた講師は不愉快そうな顔をしたが、それ以上は茂木を責めることなく講義に戻った。
声を発してくれたのが加賀だった。
出典:祈りの幕が下りる時p269
いやあ、めちゃくちゃカッコいいですよね。
茂木は加賀の同期でして、一緒に講義を受けることもあったのですが、その際に加賀が助けてくれたんですよ。
しかも、この当時はほぼ面識が無い他人同士ですからね。
他人が叱責されていても、普通は見て見ぬ振りをしてしまうと思います。
ただ加賀は、自身の信念に則って見知らぬ同期を助けたのです。
この一件があったことで、茂木は加賀に信頼を寄せるようになったのですが、そのことが今回の事件の真相を暴くピースになっています。
以上の描写からは、人の助けを得られる人は、無意識のレベルで日々人を助けているんだなと思わせてくれましたね。
この執念、見習いたい
またまた加賀の人柄の話になってしまうんですけど、めちゃくちゃ心に染みた言葉がありますので、抜粋してご紹介します。
通りに出た加賀は、遠くに目をやった。タクシーを捕まえる気らしい。その横顔を見ているうちに思いついたことがあった。
「どれだけ無駄足を踏んだかで捜査の結果が変わってくる、だな?」
加賀は松宮を見て、にやりと笑った。「まあ、そういうことだ」
出典:祈りの幕が下りる時p182
言葉を発したのは相棒の松宮ですが、これは加賀の人柄を表しているわけです。
ちなみに、ここで言う「無駄足」なんですけど、実際にめちゃくちゃ地味で泥臭い作業なんですよ。
どう考えても無駄足に終わりそうですし、途方もない作業なのは間違いないのですが、加賀は最後までそれをやり通すわけです。
僕は、こういう無駄足を踏める人間がめちゃ好きなんですよね。
効率的に動くことも重要ではありますが、時には効率など考えないで没頭していきたいと思いました。
まとめ
今回は、『祈りの幕が下りる時』のあらすじ・感想について書いてみました。
冒頭でも述べましたが、涙腺が弱い方なら確実に泣ける話かなと思います。
ただ、よりストーリーに没頭するためには過去作に対する理解も結構重要になりますので、できれば過去作から順に読んでみてください。
ちなみに、『祈りの幕が下りる時』は加賀恭一郎シリーズの9作品目でして、1作品目は『卒業』です。
では、以上となります。
最後まで見て頂き、ありがとうございました。